兵士の手記:「忍び寄るオニたち」
まただ。
今度は門番に立っていた小杉二等兵が消えた。
不審な物音を耳にした者はいない。
だが夜明けには、ヘルメットしか残っていなかった。
足跡も、血痕も、薬きょうすらない。
何もない!
みんな中国人ゲリラかアメリカ兵のしわざだと話している。
バカな!
みんな何もわかっていない。
我々はオニにつけ狙われているのだ。
この島に残る遺跡に棲む、浮かばれぬ悪霊たちだ。
縄張りに侵入してきた我々を見張り、隙をうかがっているのだ。
おびただしい数の船の残骸と遺跡・・・
この島は巨大な墓場だ。
近いうちに必ず、オニどもが襲ってくる。
兵士がつけていた日記ね。日本の民間伝承に伝わる「オニ」に言及してるけど、実際は何だったのかしら。